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もう時間がない。このPCを奴らに渡してはならない。
破壊することも考えたが、そうすると君たちがこの学園の正体を明らかにすることも、我々の悲願を叶えることもできなくなる。
どちらにせよ、君たちが真相に辿り着かなければ、間もなく君たちも行方不明者として殺されてしまうだろう。
万が一、このPCが奴らの手に渡ってしまった場合のことも考え、一部わかりにくい表現をすると思う。
君たちには伝わると信じている。
全ては、もうこの世にはいないであろう我々が、君たちに狂気に満ちた復讐の代行をさせていた。
まず、君たちの下駄箱に封筒を入れたのは私だ。
しかし、その内の三つの封筒の内容を私は正確には把握していない。
その中には彼の希望が、もしくは憎悪に満ちた願いが書いてあったかもしれない。
この封筒を用意していたとき、彼の正気はもうほとんど保たれていなかった。
そして、Aと書かれた封筒を用意したのは私だ。
アルは、私の娘は、我々の心臓部に辿り着くために必要な存在だ。
奴らに悟られないよう、そこに辿り着いてほしい。
また、他の三人もそこへの鍵になっている。そこに、この学園の狂気の正体、我々の願いが隠されている。
君たちはすでに気づいているだろう。
「ネームレス・カルト」を作ったのは我々だ。
このゲームは奴らに気づかれずに、奴らに対抗する力を蓄え、この学園を根本から救う手段を得るために作られた。
ゲームという媒体を選んだのは、奴らの目を欺くためのカモフラージュに過ぎない。
しかし、このゲームを学園で広め、一年近く経った今、奴らも薄々勘付き始めた。
洗脳にノイズを感じたのだろう。
時間がないと判断した私は、奴らを炙り出すために危険な賭けに出た。
この学園内に「ネームレス・カルト」の開発者がいるという噂を、自ら流した。
そうすれば、奴らも血眼になって我々を探しに来るだろうと思った。
我々は奴らの正体を、奴らは我々の正体を追っていた。
しかし、想定外のことが起こった。
私が奴らの特定に手こずっていると、今度は奴らから仕掛けてきた。
先日の中間試験だ。
奴らは、自分たちにしかわからないであろう問題を試験に使ってきた。
これで奴らは狂信者、つまりは洗脳済みの人間と、そうでない人間を区別したのだろう。
あとは簡単だ、そうでない人間を一人ずつ消していけばいい。
そして、ゲームの更新が止まれば、開発者を消せたことになると考えたんだ。
皆殺しにすれば簡単だったのだろうが、それでは将来、奴らの手駒となるであろう人材をも殺してしまうことになる。
それを渋ったのか、それとも遊ばれていたのか、それはわからない。
依って、最近の生徒の欠席理由は二つある。
一つは、「ネームレス・カルト」による体調不良者だ。
このゲームは、アプリを触っている人間から徐々に魔力を奪う。
やりこんでいる人間ほど体調は悪くなるが、ゲームのやりすぎ程度にしか思われないだろう。
そして、このゲームをやっている人間は奴らの洗脳を中和する。
中和する呪文をプレイヤーの魔力から生成し、余りの魔力を我々が貯蔵している。
もう一つの欠席者は、奴らに襲われた人間だ。
ゲームを更新できないくらいに力を奪われたか、殺されたか。
これが、ここ最近流れていた噂「学園内にいるゲームの開発者」と「ゲームで人が倒れる謎」の真相だ。
ここは悪魔の手のひらだ。
君たちはここから逃れるか、悪魔を殺す必要がある。
生き残るために。
突然、封筒を送りつけて、勝手な話だということはわかっている。
復讐も、願いも、我々自身の手で成し遂げるべきだったと。
だが、もはや、それすら叶わない。
誰も彼も救うなんて、無理だとわかっていた。
それでも我々は、あの輝かしい日常を取り戻したいと、切に願っていた。
そして我々は、それを奪った奴らを殺してやりたいと、常に思っていた。
諦めきれなかった我々は、君たちに全てを託した。
我々の意思を、君たちが作る未来に連れて行ってほしい。
最後に、私の娘に伝えてほしい。
ごめんなさい、約束m|