ガンス──いや、クリスへ
この手紙は、最後まで渡そうか悩んでいたものだ。
もしかしたら、渡せていないかもしれない。
もし、渡せていないのだとしたら悪いことをした。
読んでいるということは、もしかしたら君は解雇された直後で困惑しているかもしれないし、私の古い友人が君に託したのかもしれないね。
本当に申し訳ないことをした。許しておくれ。
まず、10年前のことを謝らせてほしい。
君は、10年前一度死にかけている。
あの、ノルン最強のヒットマン”ハルパー”に立ち向かったのだ、無理はない。
クリス、君は私の息子夫婦のボディガードだった。
しかし、ロレンスの放ったヒットマン”ハルパー”により、息子夫婦は死に、君も息子の妻を守ろうとし致命傷を負ってしまってね。
私は君を買っていたから、あの時君にはあるものを……壺を君に託し、そのせいで生きづらくなってしまっていたのなら、何度謝っても足りはしない。
壺は今も君の心臓の代わりに、その幸運を吸いながら動いていることだろう。
何故君があの頃からガンス・リンガーという名前を名乗り始めたのか、私にはわからないが……君は、自分の名前なんてとっくに思い出しているんだろう。
このくらいの付き合いにもなれば、私にもわかるさ。
だが、私も君に対して隠し事があったのは事実だ。
君にも私に話したくない事情があったんだろう。
次に解雇理由についてだ。
私は君が嫌いで解雇したわけでも、何か君が問題を起こした訳でもない。
君には違う仕事を任せたいから、私の元を去ってもらった。
驚くかもしれないが、君には私の孫娘……ビリーを守ってほしいと考えている。
私に孫がいることを不思議に思うかもしれないね。
断ってくれても構わない。
でも、もしこの老いぼれの最後のお願いを聞いてくれるならば。
どうか、孫の平穏な日々を君の手で守ってあげてくれ。